中小企業の就業規則の見直し|法律を守る書類から、会社の方針を伝える道具へ
早田経営支援オフィス 早田直弘|杉並区・中野区の中小企業診断士×社会保険労務士

中小企業の就業規則の見直しで、一番大事なポイントを書きます。就業規則を、法律を守るための書類ではなく、会社の方針を社員に伝える道具として作り直す、という話です。
「とりあえず作った」就業規則は、経営と関係がない
就業規則を、とりあえず作ったという会社はたくさんあります。作ったあとは使われず、経営と関係のないものになっています。
社長は、普段、就業規則を意識して仕事をしていません。そういうものがあることも、中身がどうなっているかも、頭にありません。細かい定めを社長が覚えていないのは当然です。問題は、そもそも経営に使おうという意識がないことです。
社員も同じです。就業規則を社員に周知することは、労働基準法106条で決まっています。しかし、一度周知しただけでは、社員の頭に残り続けるわけではありません。普段使わなければ、置き場所や見方も、中身も忘れられていきます。
そして、トラブルが起きたときに、初めて中を開きます。
就業規則の見直しは、社長に方針を聞くことから始める
就業規則を作るとき、見直すときは、法律の話より先に、社長の方針を聞くことが必要です。会社をどうしていきたいのか。どんなビジョンを持ち、どんな経営計画を立てているのか。社員に何を大事にして仕事をしてほしいのか。どういう社員になってほしいのか。
その方針によって、社員に奨励する行動と、してほしくない行動が変わります。何を表彰の対象にし、何を懲戒の対象にするか。その行動をどの程度重く見るか。こうした判断基準にも、会社の方針を反映させる必要があります。
ただ、理想の会社を聞くと、社長の答えはきれいな言葉になりがちです。そこで、次の三つもあわせて聞くことが大事です。
一つ目は、「これだけはやってほしくない」ことです。過去に実際に困った出来事から聞くと、答えが具体的になります。二つ目は、細かく決めたいのか、社員に任せたいのか、です。社長の答えによって、規則をどこまで細かく書くかが変わります。
三つ目は、今いる社員の顔を思い浮かべてもらい、誰にどうなってほしいかを聞くことです。理想の社員像を聞くだけでは、話が抽象的なままです。一番効くのは、この三つ目です。
ひな形だけでは、会社の方針に沿った懲戒規定にならない
たとえば、指導や指示を無視する社員が出たとします。会社は対応を考えるために、就業規則を開きます。
ひな形(テンプレート)には、懲戒の種類や事由が書かれています。しかし、自社でどの行動を問題とし、何を重く見るかという価値判断までは入っていません。どの行動をどの程度の処分に結び付けるか。どこまで明確に決め、どこに個別判断の余地を残すか。そこは、会社の方針に沿って具体的に考える必要があります。
その判断基準が曖昧なままでは、会社はどうしたらよいか分かりません。懲戒を適用しても、それが妥当かどうかを、外に向けて説明しにくくなります。
懲戒については、労働契約法15条に定めがあります。懲戒が、行為の性質や態様などに照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、権利の濫用として無効になります。処分の重さを決める基準が規則になければ、その処分が相当だと説明する手がかりがありません。
懲戒規定に処分の判断基準まで書いておく必要については、「注意しても直らない社員への対応」にも書きました。
方針から作ると、懲戒規定は具体的になる
方針を聞かれると、社長は、指示を無視する社員が出たときにどうするかを真剣に考えます。どういう指導をするか、というところまで考えます。指導しても守られなかったとき、改善が見られなかったときに、会社はどう対応するのか。そこまで考えるから、定めが具体的になります。
ひな形を写しただけでは、この考える工程を飛ばしてしまいます。就業規則の具体性は、社長がどれだけ真剣に考えたかで決まります。
見直した就業規則は、使って見せて周知する
何が良くて、何が良くないのか。何をしたら、どうなるのか。社員がその基準を知っていることは、社員自身を守ることにもつながります。行動したあとで初めて問題だと知らされ、「就業規則に書いてあるから」と懲戒される。それでは、社員は安心して働けません。社員が自分の行動を判断できるように、会社の基準を日頃から伝える必要があります。
就業規則は、作っただけでは方針が伝わりません。大事なのは、ことあるごとに朝礼などで就業規則について話すことです。入社のときに説明すること、改定のときに社長が自分の言葉で話すこと、置き場所を決めて知らせることも、どれも効きます。
そのうえで、二つを足します。一つは、表彰・懲戒・昇給を決めたときに、規則のどの条に基づいたかを社員に示すことです。規則を実際に使って見せることが、一番よく伝わります。
もう一つは、改定のときの意見聴取です。就業規則を作るときや変えるときは、社員の過半数代表者の意見を聞くことが、労働基準法90条で決まっています(社員の過半数で組織する労働組合があれば、その組合の意見を聞きます)。これを形だけで済ませず、社長が方針を説明し、社員の受け止め方を聞く場として使います。
就業規則の見直しは、会社をどうしたいかを言葉にする仕事
就業規則の見直しは、条文を今の法律に合わせるだけの作業ではありません。会社をどうしたいかを、社長が言葉にする仕事です。
当事務所では、いまの就業規則を無料で診断しています。法律に合っていない所と、これからの法改正で直す必要が出る所を、5営業日でお返しします。就業規則の無料診断からお申し込みください。見直しや作成のご相談は、労務のページをご覧ください。

