資金繰り表を銀行などの金融機関に毎月提出する|融資の相談がスムーズになる理由
早田経営支援オフィス 早田直弘|杉並区・中野区の中小企業診断士×社会保険労務士

資金繰り表と試算表を、毎月、借入している銀行や信用金庫、日本政策金融公庫などの金融機関に提出する。資金繰り表を作って毎月の予実管理を回している会社に、私がもう一歩だけお勧めしていることです。
会社の財務の状態を、良い月も悪い月も、隠さずに金融機関に見せるということです。
資金繰り表をこれから作る場合は、先に「資金繰り表の作り方」を読んでください。この記事では、作った資金繰り表を金融機関に見せると何が変わるのかを、金融機関の中の仕組みから書きます。
融資稟議は、担当者が書いて支店長が決める
融資を決めるのは、窓口の担当者ひとりではありません。担当者が稟議書を書き、支店長が決裁します。案件によっては、本部の審査まで上がります。この一連の流れを、融資稟議と呼びます。
担当者は、あなたの会社の状況を稟議書にまとめ、支店長や本部に説明します。そのため、担当者が会社の状況を把握し、具体的に説明できることが大切です。
資金繰り表と試算表を毎月提出している会社は、担当者が稟議書を書きやすい会社です。担当者は、良い月も悪い月も、会社の状況を聞いています。だから、会社のことを自分の言葉で説明できます。
担当者は数年で異動し、引き継ぎの期間も長くはありません。それでも、毎月の資料は金融機関の中に残ります。担当者が替わっても、会社についての情報は、金融機関の中に積み上がっていきます。
資金繰り表を共有していた会社で、担当者が言ったこと
支援先で、実際にあった話です。関係者の特定につながる情報は伏せて紹介します。
その会社は、資金繰り表と試算表を金融機関と共有していました。送るというより、金融機関に持っていったり、担当者が会社に来たときに見せたりする形です。
その会社が投資のための融資を相談したとき、融資が早く出たわけではありません。変わったのは、担当者への説明でした。
担当者は、そろそろ投資の時期だということを、相談の前から分かっていました。財務の状態も把握していました。そのため、社長が細かく説明しなくても話が通り、金融機関の側でも準備ができていました。
担当者からは、ずっと状況を把握しているので稟議書が書きやすい、という言葉もありました。
逆に、普段は何も見せず、借りたいときだけ資料を出して判断を求めたらどうなるでしょうか。担当者は会社の状況を一から聞き取り、判断に必要な情報をそろえてから稟議書を書くことになります。担当者からすれば、かなり苦しい話です。
悪い月の資金繰り表こそ、金融機関に出す
悪い月の数字を見せるのは、気が進まないかもしれません。
ただ、考えてみてください。借入を申し込めば、どうせ悪い月の数字も見せることになります。後でまとめて見せるか、毎月ふつうのこととして見せるか。違いはそれだけです。
悪い月こそ、「原因はこれで、来月からこうします」と一言付けて出してください。担当者は、数字が悪くなった理由と、会社がどう対応するかを把握できます。私は、この積み重ねが「数字を見て経営している会社」という信頼につながると考えています。
一番まずいのは、数字が悪くなった途端に提出を止めることです。人でも、急に連絡が途絶えれば悪いほうに考えます。金融機関も同じで、急に出てこなくなった数字は、悪い方向に受け取られるおそれがあります。大事なのは、続けることと、悪いときにも止めないことです。
金融機関への提出は、負担をかけずに続ける
毎月の提出といっても、毎月金融機関に出向いて面談する必要はありません。
担当者が毎月来る付き合いなら、そのときに渡せば足ります。そうでなければ、データで送って「ご確認ください」と一言添えるだけで構いません。
金融機関との付き合い方では、情報開示と数字の管理が見られる
中小企業への融資では、金融機関は経営者への信頼も重視します。私は、その信頼を二つに分けて考えています。
一つは、良いときも悪いときも情報を開示する誠実さです。
もう一つは、数字を管理する力です。経営者が毎月数字を押さえ、必要なら外部の専門家も使って資料を整え、それを経営に活かします。金融機関に毎月出す資料からは、情報を開示する姿勢と、数字を管理して経営に活かす力の両方が伝わります。
商売の付き合いとして考えれば、当たり前の話です。誰でも、信頼できて仕事のできる相手と付き合いたいと思うものです。金融機関も同じです。その当たり前を、金融機関に対してもやる。それだけのことです。

