面接で見抜く|みんな「作ってくる」を前提に、何を聞くか
早田経営支援オフィス 早田直弘|中小企業診断士×社会保険労務士

面接では、誰もが「作って」きます。志望動機も自己PRも、準備してくるのが当たり前です。それは責められることではありません。真剣だから準備するのです。
問題は、採る側がその前提で面接をつくっていないことです。整った説明を聞いて、その人の実力が分かったつもりになる。私が確かめたいのは、準備してきた話の完成度ではありません。その人が、今、どれだけ考える力を持っているかです。
過去の話が事実でも、それだけでは分からない
面接には、過去の行動を具体的に掘る定石があります。「その時、具体的に何をしましたか」「相手はどう反応しましたか」。細部まで聞けば、本人が実際に経験したことかどうかが分かる、という考え方です。
ただ、面接の場で、その話を十分に裏取りすることはできません。聞く側は、具体性や辻褄から「もっともらしい」と判断することになります。そして、その具体性は、練習と支援で作り込めます。整った話ができることと、仕事ができることは同じではありません。
もっと大事なのは、仮にすべて事実だったとして、それで何が分かるのか、ということです。
成果には条件があります。会社の看板、周囲の支援、市場の追い風。本人が何を担い、何によって成果が出たのか。条件の違う自社でも、その力を発揮できるのか。過去の成果を詳しく説明してもらうだけでは、そこまでは分かりません。
経歴を聞く意味がないのではありません。経歴の説明を、そのまま本人の力の証明にしないということです。
抽象を投げて、波紋を見る
だから私は、本人が聞かれると想定していない問いを投げます。抽象的な問いを投げ、その人の中に立つ波紋を見る。
ここでいう抽象とは、難しい言葉を使うことではありません。一つの出来事の説明から離れて、その意味や、物事の関係、判断の前提を考えてもらうことです。
初めての問いに対して、まず何に着目するか。何を問題だと捉えるか。条件が足りなければ、自分で置くのか、確認するのか。一つの見方で止まるのか、別の可能性まで考えるのか。
そこに、普段の思考の癖や深さが出ます。何を当然とし、何を疑わないかという、思考の偏りも見えてきます。
すらすら答えられるかを見ているのではありません。しばらく考え込んでも、その後に自分の考えを組み立てていく人はいます。反対に、即答しても、中身は借り物の一般論だけという人もいる。見るのは返答の速さではなく、思考の進み方です。
成果を生んだ思考の痕跡を見る
私は、仕事で難しい問題に向き合い、自分で考えて成果を出してきた経験は、この反応に出ると考えています。
問題を捉え、判断し、試して、うまくいかなければ考え直す。その過程をくぐってきた人には、条件への目配りや、複数の視点が身についています。新しい問いにも、それまで考えてきたことを使って向き合える。
もちろん、思考が深いからといって、高い成果を上げてきたと断定はできません。ただ、語られる成果は大きいのに、問いを変えると考えが続かないなら、その成果の中で本人が何を担っていたのか、私はもう一度確かめます。
学歴も大事な判断材料です。しかし、その後の仕事で何を鍛えてきたかまでは、学歴だけでは分かりません。見たいのは、過去の評価ではなく、今のその人の力です。
そして、考える力と行動する姿勢も、ひとまとめにはしません。何を優先し、どこで決め、自分は何を引き受けようとするか。答えの中にある価値観や判断の理由から、考えを行動につなげる姿勢も確かめていきます。
問いは、採りたい人によって変える
見たいものは共通していても、問いは一つではありません。幹部候補に求めるものと、経験の浅い若手や、堅実に作業を担ってほしい人に求めるものは違います。
同じ難しさの問いを全員にぶつけるのではなく、採用する役割に合わせて、何を考えてもらうかを変えます。
幹部候補には、ビジネスの抽象を投げる
会社の状況をこちらから説明したうえで、「根本的な問題はどこにあると思いますか」と聞く。
材料はこちらが渡します。「うちの課題を挙げてください」と丸投げすれば、企業研究でどれだけ情報を集めたかの話になります。公開情報の少ない中小企業なら、なおさらです。見たいのは情報を持っているかではなく、渡した情報をどう捉えるかです。
もう一つ。「長年その仕事を担ってきたベテラン社員に、やり方を変えてもらう必要があります。どう進めますか」。
この問いでは、わざと条件を細かく設定しません。「そのベテランが現場の実権を握っているなら」「変える理由を本人がどう受け止めているかによりますが」。そうした場合分けが出るか。判断に必要な条件を、自分から確認するか。
答えを聞いたら、条件を変えて、さらに問う。最初の一般論を繰り返すのか、違いを捉えて考え直すのか。そこまで見ます。
若手には、本人の言葉を掘る
経験の少ない若手に、会社の課題を問うのは酷です。代わりに、本人が自分で使った言葉を掘ります。
履歴書に「真面目にコツコツ頑張る」とあれば、「あなたにとって、真面目とはどういうことですか」と聞く。
「地道に頑張ることです」で止まるなら、「では、頼まれたことを断らない人は、真面目な人だと思いますか」と場面を変えてみる。
約束を守ることなのか、仕事の目的を果たすことなのか。引き受けすぎて約束を守れなくなる場合は、どう考えるのか。
こちらの正解を当てさせるのではありません。反対から考えたり、似たものを比べたり、状況に応じて考え直したりできるか。自分で使った言葉の中身を、本人の考えで説明してもらいます。
作業者には、物事の受け取り方を探る
堅実に作業を担ってほしい採用では、物事の受け取り方を見ます。
同じ指摘でも、自分を否定されたと受け取る人もいれば、改善のヒントとして受け取る人もいる。その違いは、一緒に仕事を進めるうえで大きい。
「言い方のきつい人に接したとき、どう対処してきましたか。どう捉えるようにしてきましたか」と聞くことがあります。
見たいのは、嫌なことを言われても平気な人かどうかではありません。腹が立つことは誰にでもある。その感情とどう付き合い、相手の言い方と指摘の内容をどう受け止めてきたかです。過去の出来事を聞いていても、掘るのは、その人の捉え方の方です。
別の角度から、「仮に時給が大きく上がるとしたら、メリットとデメリットは何だと思いますか」と聞くこともあります。収入だけに目が向くのか、期待される働きや責任まで考えるのか。何を挙げ、なぜそう考えたのかを聞きます。
答えを一つの正解に当てはめるのではなく、何を大事にし、どんな順番で物事を考える人なのかを確かめるのです。
想定問答では用意できないもの
こうした質問を公開すると、対策されないかと思われるかもしれません。
しかし、見ているのは、用意された答えではありません。本人が想定していなかった問いに対して、その場でどう考えを起こし、進めるかです。答えに応じて、次の問いも変わります。
普段から問題意識を持ち、自分なりに考え、判断してきた。その積み重ねは、面接直前に想定問答を整えることとは別物です。もし、そのために日頃から考える習慣を身につけてきたのなら、それはもう小手先の対策ではありません。こちらが見たい力を鍛えてきたということです。
「感じがいい」「自分と合いそうだ」という印象とは、別に見る。面接官が同意できる答えかどうかではなく、本人がどう考えて、その答えに至ったかを見る。
幹部候補には「問題をどう捉えるか」を、若手には「その言葉をどう考えているか」を、作業者には「その出来事をどう受け取るか」を聞く。
問いは変えても、見たいものは一つです。過去の説明の立派さではなく、今、目の前にいる人の考える力。それが、自社で任せたい仕事にどうつながるかです。
だから、その手前で、誰を採るのかが決まっていなければ、何を見るかも決まりません。その定義は「『良い人』が来ない理由」に書きました。質問は道具です。先に要るのは、何を見たいかです。
なお、ここまでの質問をするには、面接官自身にも深い教養やビジネスの知識、物事の道理を考える力が要ります。単純に社内で仕事ができる人に面接を任せればできる、というものではありません。何を見て、どこを掘り、返答のどこが重要かを判断する側にも、多角的な能力が求められる。この話は、また別の記事で書きます。
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