採用で「良い人が来ない」の正体|誰に来てほしいかを決めていますか
「応募は来るんだけど、良い人が来ない」。採用の相談で、「来ない」の次に多い言葉です。
そもそも応募が来ないという段階の話は、「求人に応募が来ない」に書きました。この記事は、その次の段階の話です。
そう言う社長に、「良い人とは、どんな人ですか」と聞いてみます。返ってくる答えは、だいたい似ています。
指示しなくても働ける。自分で考える力がある。社会人としての常識がある。頭がいい。コミュニケーション能力が高い。
どれも、もっともです。ただ、これは「どの会社にとっても良い人」の羅列であって、「うちの会社にとっての良い人」ではありません。ここに、来ない原因があります。
なんとなく良い人は、なんとなくしか来ない
どの会社でも通用する優秀な人は、どの会社も欲しがっています。その人たちには選択肢があり、より良い待遇、より知られた会社を選べる立場にいます。一方で、自社が出せる待遇や仕事には限りがあります。
人物像が「全部そろった良い人」のまま高く置かれ、そこに向けた特別な言葉もなく、誰にでも当てはまる求人を不特定多数に出す。これで来るのは偶然だけです。「良い人が来ない」の正体は、選抜の失敗ではなく、誰に来てほしいかを決めていないことにあります。
やることは順番に二つです。自分たちが採用すべきで、かつ現実的に採用できる人を明確にすること。そして、その人に向けて発信すること。
まず、「採用すべきで、採用できる人」を決める
人物像を絞り込むときの考え方を書きます。
最初に、「良い人」を要件に分解します。うちの仕事で成果を出すには、具体的に何ができる必要があるのか。「頭がいい」ではなく、行動のレベルまで下ろします。
次に、優先順位です。出せる待遇に限りがある以上、全部そろった人は来ません。要件のどれを必須とし、どれなら妥協するかを決める。予算の中で仕様の優先順位を決める、買い物と同じことを採用でもやるだけです。
では、何を妥協するか。私の線引きは、はっきりしています。
妥協していいのは、教育で身に付けさせられるものです。知識と経験、社会人としての常識。ここが足りなくても、入ってから教えられます。コミュニケーションも実は技術で、向上心があり、人の言うことを受け入れる度量がある人なら、伝えられますし、自分で学んでいきます。
譲ってはいけないのは、考え方、ものの見方、物事の捉え方です。ここがちゃんとしていれば、足りないものはあとから身に付きます。ここが駄目なら、何を教育しても入っていきません。
こうして絞ると、求める人物像は「全部そろったスター」から、たとえば「経験は浅いが、考え方が合い、吸収する度量のある人」に変わります。うちの待遇で現実に呼べて、うちが育てられて、育てば戦力になる。それが、自分たちにとっての良い人です。
その人に向けて、発信する
人物像が決まると、求人に書くことが変わります。
不特定多数に向けた求人は、誰にでも当てはまる言葉でできています。誰にでも当てはまる言葉は、誰の心にも刺さりません。
そうではなく、決めたその人——ひとりの個人——に向けて書く。その人は何に不満を持ち、何を探しているのか。その人が知りたいのは、仕事のどの部分か。うちの何を見せれば、その人は「自分のことだ」と思うのか。どこにスポットを当てるかは、全部その人から逆算して決まります。
これは商売と同じです。全員に売ろうとする商品は誰にも売れず、顧客を決めた商品から売れていく。採用も、求職者という顧客を決めるところからです。
不特定多数に出して、なんとなく良い人を待つ。これをやめて、採用すべきで採用できるひとりを決め、その人に向けて発する。それだけで、「自分たちにとっての良い人」が来る可能性は、確実に上がっていきます。
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